2026.08.26
軽井沢の豊かな自然の中、薪と煙で大きな塊肉をじっくり仕上げる『Smokemanship KARUIZAWA』。調理にかかる時間は、なんと驚きの10数時間。もはや「焼く」というより、肉と一晩をともにする仕事です。手がけるのは、飲食経験も料理の修業経験もなかったという店主・萩原理之さん。その始まりからユニークな調理法、信州の食材に込める思いなどを伺いながら、気になるそのお味まで体験してきました。

Smokemanship KARUIZAWA
店主/萩原 理之さん
神奈川県出身。家族とともに軽井沢へ移住後、偶然目にした動画をきっかけに、テキサスバーベキューの研究を開始。2023年5月、同店オープン。信州の食材と薪を生かした、独自のスモーク料理を追求している。
目次
旧軽井沢エリアの目抜き通りとして賑わう、旧軽井沢銀座通りの1本裏手。アメリカンな佇まいに、香ばしい薫香をまとうテキサスバーベキューレストラン『Smokemanship KARUIZAWA』。扉を開ける前から胃袋を刺激してくる、香りまでごちそうな1軒。

そもそもテキサスバーベキューとは、大きな塊肉を薪の煙と熱で長時間かけて仕上げる、アメリカ・テキサス州で育まれたバーベキュースタイル。豪快な見た目とは裏腹に、火の入れ方はいたって繊細。表面に奥深い香薫をまとい、内側はしっとり柔らかく繊維がほどけるような食感は、日本でいう燻製ともバーベキューともひと味違う、肉を主役に据えた調理文化です。

そんなテキサスバーベキューを黙々とかたちにしているのが店主の萩原さん。いかにも手慣れていそうな風貌ながら、もともと飲食業や料理の経験があったわけではなく、その入口はかなり偶然だったそう。
「2018年頃に、たまたまテキサスバーベキューの調理動画を見たんです。『これ、食べてみたいな』と思ったのが最初でした。料理の経験もあまりなかったんですが、バーベキューなら自分でもできるかもしれないな、と。そこから少しずつ作り始めました」。
しかも当時は、本場テキサスで食べた経験すらなし。正解の見えないまま手探りで始めたからこそ、むしろ面白かったのだとか。
「薪を使って火を起こして、煙でじっくり仕上げていく。その過程そのものに、すごく引き込まれました。肉を焼くというより、火と向き合う時間がずっと続いていく感じというか。やればやるほど、奥が深いなと思いましたね」。


巨大なスモーカーは、 本場テキサス州の『M&M BBQ Company』製。
動画1本から始まった試行錯誤は、やがてオンライン販売を経て、店で提供するための本格的な調理へ。現在はスタッフと交代しながら、長時間にわたって火と煙を管理しています。
「テキサスバーベキューは、香りをつけることが中心の燻製とは少し違います。薪を燃やして、庫内をだいたい125℃に保ちながら、その煙と輻射熱で肉にじっくり火を入れていく。焼くというより、“煙で茹でる”感覚に近いですね」。
看板メニューのブリスケットに使うのは、長野県東御市で育てられた『信州峯村牛』。調理にはおよそ15〜16時間もかかるそうで、取材日も朝からスモーカーに火を入れ、仕上がるのは翌日の午前4時頃とのこと。肉と一晩をともにする、というリードの表現は誇張ではなかった模様。「薪も信州産のナラが中心で、桜やリンゴを混ぜることもあります。軽井沢でやるなら、できるだけこの土地のものを使いたい。アメリカの調理法ではあるんですけど、信州の薪で、信州の食材を料理することに意味があると思っています」。


スペアリブとプルドポークの〈2ミートコンボプレート〉¥2,500。
そんな萩原さん渾身のテキサスバーベキューを、HESTA LIFE広報の2人が実食。テーブルに運ばれてきたプレートを前に、まず驚いたのは、プラスチックのフォークとナイフで軽く力を入れるだけでホロホロとほどけていく、その衝撃的なやわらかさ。スペアリブも骨まわりまでやわらかく、骨離れのよさに思わず顔を見合わせる場面も。

店内では、真空パックにしたスモークミートの購入も可能。自宅で湯煎するだけで、絶品の香りとやわらかさを楽しめます。さらにオンラインストアでも、『信州峯村牛』のブリスケットをはじめ、スモークリブやプルドポーク、各種ソースなどを販売。軽井沢で味わった余韻をそのまま持ち帰るもよし、後日ふたたび煙に呼び戻されるもよし。
掲げられたテキサス州旗、信州峯村牛や地元の薪、半日以上にも及ぶ火入れ。『Smokemanship KARUIZAWA』で味わえるのは、料理だけでなく、その背景にある時間と手仕事まで含めた、ここだけのテキサスバーベキューの世界観。
「テキサスバーベキュー自体を知らない方も多いなか、まずはこういう料理があることを知ってもらって、美味しいと思ってもらいたい。今後はブリスケットだけではなく、和牛のいろいろな部位や味付けにも挑戦しながら、信州の食材の魅力をもっと伝えていきたいですね」。
偶然見た1本の動画から始まり、いまでは軽井沢の薪と食材を生かす逸品へ。テキサス生まれの調理法を、自分たちなりのやり方で育てていく『Smokemanship KARUIZAWA』。煙の向こうには、まだまだ面白い肉の世界が待っています。

Smokemanship KARUIZAWA
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢859-1 MAP
URL:https://smokemanship.myshopify.com/
Credit
Photo_Ryo Sato
Text & Edit_Satoshi Yamamoto
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